Gabe Brownとカーボンファーミングの原点

📗 To read in English: Gabe Brown and the Roots of Carbon Farming

カーボンファーミングは単なる流行語ではありません。これは、土壌の健康を回復し、大気中の炭素を吸収するための、極めて実践的な農法です。この分野で最も影響力のある人物のひとりが、ノースダコタ州の農家ゲイブ・ブラウンであり、彼の実践は自身の土地だけでなく、世界中の農家や研究者の考え方に大きな変化をもたらしました。

リジェネラティブ農業とカーボンファーミング

リジェネラティブ農業という言葉は、1980年代初頭にロデール研究所などの活動によって広まりました。土壌の再生、多様性の向上、水循環の改善などが主な関心事です。これに対し、カーボンファーミングはその後に登場し、**気候変動対策としての炭素隔離(炭素固定)** に重点を置いています。バイオチャーの施用、不耕起、通年の根の維持などの手法によって、農業が炭素吸収源となる可能性に注目しています。

DirtKarmaでは「カーボンファーミング」という言葉を好んで使います。なぜなら、これは日本の燻炭も含めたバイオチャーによる炭素の長期的な貯留に焦点を当てているからです。土壌生態系、気候への耐性、そして安定した炭素を用いて土を豊かにするという古来の知恵が、ここに結びついています。

ゲイブ・ブラウンが提唱する「土壌健康の5原則」

  1. 攪乱を最小限に
    • 耕起や化学薬剤の使用は土壌の生態系を壊し、炭素を大気中に放出します。
  2. 土壌を守る被覆
    • 有機物で土壌表面を覆うことで、乾燥・侵食・過熱から守ります。
  3. 通年で生きた根を保つ
    • 生きた根が炭素を供給し、微生物相を育てます。
  4. 多様性を促進する
    • 多様な植物が多様な微生物を育み、病害リスクを減らします。
  5. 家畜を統合する
    • 家畜の活動が栄養を循環させ、植生の回復を促進します。

そして第6の原則:コンテクスト(状況)

ゲイブ・ブラウンは講演の中で6つ目の原則として「コンテクスト(状況)」の重要性を語っています。気候、土壌、使用可能な機材、文化的背景などが、どの手法が有効かを大きく左右します。

日本における多種混合カバークロップの動向

米国では、多種混合のカバークロップがリジェネラティブ農業の中核となっています。多様な根の形や働きが微生物群に刺激を与え、土壌の状態を改善します。日本では、多種混合カバークロップという考え方はまだ発展途上です。

用語の使い分けも重要です。

  • 緑肥:従来の「すき込み」前提の作物
  • 被覆作物 / カバークロップ:被覆のために育て、すき込まずに残す作物
  • リビングマルチ:近年注目される「生きた被覆」

日本土壌育成研究所などの研究機関は、多種混合の成功事例を紹介しています。特に有機水稲や家庭菜園規模の畑での関心が高まっています。

この投稿は、その基礎を紹介するものです。今後、それぞれのテーマを掘り下げた記事も公開していきます:

📗 To read in English: Gabe Brown and the Roots of Carbon Farming